嗤うケダモノ
「俺は着替えはイイや。
帰り、送ってかなきゃだし。」
由仁が、繋いでいない方の手で日向を指差して言った。
だが、床に膝を落として日向の足元にスリッパを差し出した『カズヨさん』が、フルフルと首を振る。
「夜道のバイクは危険ですよ。
帰りは車を手配しますから。」
「危険なのは、バイクの二人乗りより送りオオカミだよなー?
ジン?」
あぁ…
優しいおフネちゃんの言葉の後に、また不穏な声が聞こえる…
「‥‥‥チっ」
あぁぁぁぁ…
また不穏な舌打ちまで聞こえるぅぅぅ…
どーなっちゃうの?コレ。
官能の館で、エサになって食べられちゃうの?
いやいや、落ち着け。
『お祓い』の真相を聞きに来たダケだから。
断じて、お弁当としてお持ち帰りされたワケじゃないから。
家に遊びに来た、ただの後輩なンだから…
(ボーっとしてちゃダメだ。
てか、失礼だし。
キチンとご挨拶して、私の立場をご理解いただこう!)
日向は由仁の手を振りほどき、姿勢を正した。