嗤うケダモノ
漂う緊張感に、由仁は浮き出た喉仏を微かに上下させた。
日向の小さな唇が動く…
「先輩、私がドッカに連れてかれたら捜すとか、なんだったら先に監禁するとか言ってましたケド、そんな必要ナイですよ。」
「…なんで?」
「私、ナニがあっても先輩のトコロに戻りますから。
どんな障害も薙ぎ払って、絶っっ対に戻りますから。
それが私の予定調和です。」
薙ぎ払う、て。
ナニ?このコ、巨●兵?
「…
ヒナの男前っぷりは、いつだって斜め上だネー…」
由仁は日向から目を逸らして俯き、肩を震わせた。
そしてそのまま彼女を見ることなく、細い手首を掴んで引き寄せる。
不意討ちを食らって膝の上に乗っかってしまい、真っ赤になって身を捩る日向の腰を抱きしめた由仁は、彼女の滑らかな黒髪に顔を埋めた。
イイ匂い。
柔らかい。
あったかい。
幸せ。
なかなか素直になってくれないもどかしさも。
だからこそ焦がれてやまないこの気持ちも。
全部ひっくるめて、幸せ。
ナニにも、ダレにも、特別な執着を覚えなかった自分の、唯一無二。