嗤うケダモノ
「ちょ… 痛ェよ。
なんなの? さっきから。
ジャマしないでくンない?」
「全力でジャマしてやるよ。
こんな清純そうなお嬢さんをつまみ食いしようとするバカ息子を殴るのも、立派な親の務めだろ?」
(…
ダレがバカ息子?
ダレが親?)
由仁の襟首を掴んで座卓の向こう側に引きずっていく、これまた粋な付下げに亀甲模様の帯を角出しに結ったジャパニーズビューティーを、日向はポカンと見上げた。
彼女はさっきの、お色気満載リアルフジコだ。
頽廃的な雰囲気がキレイサッパリ消え失せ、小股の切れ上がったカッケー姐さんになったケド。
姐さん… 姉さん…
「あの…
先輩の… オネーサン…?」
「あら、ヤだよ。
お上手だねぇ、お嬢さん。」
茫然と呟いた日向に、ハハハと豪快に笑ったフジコちゃんがヒラヒラ片手を振る。
そして由仁をポイっと放り出して、座布団の上にキチンと正座した。
「改めまして、ようこそお越しくださいました、お嬢さん。
由仁の母、久我杏子です。
お見知り置きを。」
…
『母』… だと…?