嗤うケダモノ
「…へぇ?」
小声ながらもキッパリと言い切った由仁を横目で眺めた杏子は 楽しそうに口角を上げた。
それから、不安そうな上目遣いで由仁と杏子を交互に見る日向に視線を戻す。
「ヒナちゃん。」
「っハイ!」
突然の呼び掛けにビっと背筋を伸ばす日向に、杏子は優しく微笑みかけた。
「ウチのバカ息子のコト、よろしくお願いしますね。」
「ハイ!
‥‥‥ハイ?」
「またいつでも遊びにいらっしゃい。
今日はもう失礼しなきゃならないケド、今度ゆっくりお話しましょうね。」
「え? 仕事?」
女二人の会話に、由仁が割り込んだ。
…なんだろう?
目が輝いてマスヨ?
「…嬉しそうにしやがって。」
洗練された動作で立ち上がった杏子は、細い眉を吊り上げて由仁を睨んだ。
「今夜は八卦だから、時間はかからないよ。
私が帰った時、ヒナちゃんを部屋に連れ込んでやがったら…
命はないと思いな。」