嗤うケダモノ
「じゃ…
先輩がした『お祓い』は、その上書き暗示だったンですか…」
「そーそー。」
感嘆の響きが混じる日向の呟きに、由仁は満足そうに頷いた。
「知人の知人を装って警戒心を解いて、ソレっぽい手順を踏んで『祓った』って暗示をかけて 出掛ける用を作って現実世界に触れさせて…
あンだけ疲れた顔してたから、酒なんて呑んだら今夜は爆睡間違いナシだヨネー。」
「あのお札はなんだったンですか?」
「アレは再発防止策ってトコ。
お守りとかって、持ってるだけでなんか安心するでショ?
目に触れる場所にあるといつまでも気になっちゃうケド、ドコかに仕舞っておけば、次に見つかる頃にはイイ思い出になってるよ。」
…そんなモンなのか?
でも、もしもそれが本当なら、そんな回りくどいコトをしなくても…
「…
ユカたちに『全部気のせいだよ』って教えて、暗示を解いちゃえば良かったンじゃ…」
安堵と不安の狭間で揺れる微妙な表情をした日向が、上目遣いでチラリと由仁を見た。
彼女の懸念は尤もだ。
暗示そのものを消してしまえば 再発の恐れもないのだから。
そのほうが、二人のためだったのではないだろうか…