嗤うケダモノ
何度も規則的に触れる指先。
少し掠れた心地好い声。
それもまた、暗示のようだ。
日向の心に安心感が満ちていく。
「彼らはもう大丈夫だよ。
明日、電話でもしてあげな?
なんか楽しい話をしてリアルに目を向けさせれば、もうなんの心配もナイから。」
「ハイ…
‥‥‥‥‥よかった…」
口元に両手を当てて目を閉じた日向が、吐息のように呟いた。
頬に赤みが差し、唇が綻ぶ。
「先輩、本当にありがとうございました。」
「…
どーいたしまして…」
座卓に頬杖をついた由仁は、可憐に笑った日向を眺めて片眉をピクリと動かした。
ナニ?
その無邪気な笑顔。
さっきまで、そんな顔で笑ってくれなかったじゃん。
ナンに対しての笑顔なの?
ダレに対しての笑顔なの?
もしかして…
「…そんなに喜んじゃう?
あの男、実はヒナの元カレ?
今もまだ好きだったりして?」
半眼で日向を睨んだ由仁が、指で下唇を引っ張りながら不服そうに問うた。