嗤うケダモノ
「は?
タケルが元カレ?」
一瞬目を丸くした日向が、片手を上下に振りながら可笑しそうに笑う。
「ハハ、まっさかぁ。
てか私、カレシなんていたコトありませんし。」
ほほぅ。
そりゃ良かった。
じゃその笑顔は、警戒心が解けてきたってコトか。
大いに良かった。
「なら、友達思いなンだー。
ヒナは優しーネー。」
機嫌を良くした由仁が、艶やかに微笑みかけた。
すると日向は、途端に顔を赤らめてフイと視線を逸らす。
「そ…そんなんじゃねーデス。
てか、その、あー…
結局オバケなんて、空想の産物ってコトなんじゃりマスネ。」
うん、語尾がオカシィ。
動揺しすぎ。
あー、可愛い。
今すぐ食べたい。
四つん這いになった由仁は、獲物に迫る本物の獣のように、座卓を迂回して日向にニジリ寄った。
「全部が全部、空想の産物ってワケでもなかったりしてー。」
「えっ?!」
迫り来る由仁よりも、彼の言葉に驚いた日向が硬直した。