嗤うケダモノ
十数秒の沈黙の後に聞こえた日向の声は、硬かった。
「…まんまの意味だケド?」
答える由仁の声も、硬い。
確証はない。
だが、確率は高い。
そして、渦中にいる日向を誤魔化すことはできない。
ふ、と息を吐いてから、由仁は穏やかに語りかけた。
「落ち着いて聞いてね?
多分、この前の友達の時とは違うと思う。
ソコにいるのは危険だ。」
『…
先輩が言ってた、稀にいるヤバいのが憑いてるってコトですか?』
「かも知れない。
杏子さんに相談してみよう。
とりあえず今は…」
『…
今は、ココを出るのが先決なンですね?
わかりました。』
あら、男前。
憂慮と焦燥を気丈に飲み込んだ日向が、決然と言い放つ。
『骨の2、3本覚悟すれば、窓から出られますから。』
…
ソレは男前ってか、バカです。
目を閉じた由仁は、皺を刻んだ眉間を指で押さえた。
「やめて、ヒナ。
迎えに行くから住所教えて?」