嗤うケダモノ
「ひょっとして、俺を待たずに飛び降りよーとしてたー?」
綺麗な顔を顰める由仁の本日のファッションは、白いシャツとブルージーンズ。
やっぱり胸ははだけてるケド、意外にナチュラル志向なのカモ。
いやいや。
ソレはどーでもイイ。
その、腰に装着してるのは…
ハーネス?
カラビナで固定されてるのは…
ザイル?
ナニ?
懸垂降下でお迎えってか?
「ムチャしちゃダメでショー?
ケガしたらどーすンの。
悲しむよ? 俺が。」
大きな手が頬に触れ、ついでに耳朶まで擽られているコトにも気づかず、日向は窓枠に片膝をかけたレスキュー隊員を見上げた。
「先輩… え?上から?」
「うん。
上の奥さん、イイ人でね。
親に反対されて会えない恋人を攫いに行くって言ったら、ロミジュリみたいって感動して、協力してくれたのー。」
なんてこった。
平凡な主婦が一人、全身猥褻物に誑かされたよ…
「…その装備品も上の人の?」
「んーん、コレは俺の私物。」
なんてこった。
そー言えばこの人、本気の探検家だったよ…