嗤うケダモノ
人間の限界を超えた、凶暴で凶悪なあの力…
あんなモノを向けられたら、日向など一溜まりもないだろう。
(なんとかしなきゃ…
なんとか…)
なんとかなるとは、思えマセンケドネ?!
自分の悪足掻きっぷりに内心可笑しくなりながら、由仁はもう片方の手もアキもどきの足に伸ばした。
転んでくれたり、しねーカナ?
だが、そんなささやかな願いすら、アッサリ断ち切られてしまう。
羽を追うのに飽きた両親もどきが、二人掛かりで由仁を押さえつけたのだ。
背を踏まれる。
腕を捩り上げられる。
アキもどきの足を掴んでいた手も、簡単に外されて…
「いやぁっ! 先輩!
アキ! やめさせて! アキ!!」
(まーた、人のコトばっか…)
悲鳴を上げる日向を、由仁は血走った目で見上げた。
全く、困った人だ。
泣いて、叫んで、逃げればイイのに。
全く、可愛い人だ。
いつ零れ落ちてもおかしくないほどの涙を、気丈に堪えて。
あぁ…
駆け寄って来ようとする可愛い人の細く白い首筋に、凶々しい指先が迫る…