嗤うケダモノ
アキもどきの目と口からも、霞みが溢れ出した。
ソレはさっき両親もどきから逃げ出したモノよりも濃く、膨大だ。
霞みが霞みを呼んで融合し、一つになって開いたままの窓に向かって流れていく。
由仁は渦巻く黒い霞みの中に、躊躇なく手を突っ込んだ。
「失せろよ。」
地を這うような低い声。
『ッ!! アアアァァァァァ…』
武士ではないので、余裕で敵前逃亡しようとしていた謎の霞みは、由仁の追い討ちに断末魔を上げて霧散した。
布団の残骸やクッションは散乱しているものの、いつもの雰囲気に戻ったアキの部屋。
糸を切られたマリオネットのように倒れているアキと両親。
緊張の糸が切れた日向も、ペタンと床に座り込んだ。
「え? だいじょぶ?
ケガしたの?」
振り返り、慌てて身を屈めて日向の顔を覗き込んだ由仁の瞳は、いつものように黒く煌めいている。
なんだったンだろ。
さっきのゴールデン・アイ。
キレイな顔に、ぼんやりと朱い隈取りまで浮かんでいた。
それと、白いオーラ。
小宇宙と書いて『コスモ』と読む、アレ的な?
いやいや、まさか。
パクりにも程だろ。