嗤うケダモノ
「…
まぁ、詳しい話は杏子ちゃんから聞くのがエエじゃろ。
それはそうと…」
呆れたように眉尻を下げて苦笑してから、黄門様は辺りを見回した。
「早々に逃げんかの?」
「「なんで?」」
由仁と日向は声を揃えた。
もう絞殺される心配はないンでショ?
「何も覚えとらんのじゃぞ?
気がついたら、この惨状。
加えて家の者ではないおぬしらがおったら…」
ハイ。
空き巣扱いデスヨネ。
ワカリマス。
「逃げよー、ヒナ。」
「ラジャーです!」
由仁が日向の手を引いて動き出す。
今回は日向も、実に素直に由仁に続く。
犯罪者になんかなってたまるか。
黄門様も、当然のように由仁の肩に飛び乗った。
そういえば…
「ねぇ、ジーチャン?
名前なんてのー?」
「儂ゃ、空狐(クウコ)じゃ。
よろしく敬え。」