病まれても困るわー…
東海道先輩はぼーっとしたままだったが、遠目から見てもイケメンなことがわかった。
戸山先輩先輩はまだぼーっとしてる彼に近づき、耳打ちをした。
するとゆっくりこっちに視線を向けた。そして2人に隠れてた私と目が合うと大きく目を見開いた。
「………ひよっ…‼︎」
……え?…今…【ひよ】って…?
固まって目線がそらせない…
東海道先輩は目線を合わせたまま、ゆっくり近づいてきた。
そして近づいてきて顔がはっきりわかってきた。
彼は…
ゾッとするほど美しかった。
さっきは見開いていたが、今はもう眠そう。でも、引き込まれるような印象的な目。ずっと通った高い鼻。形のいい口。シャープな輪郭。
前髪は乱雑だが目の上真っ直ぐ切りそろえられ、サイドは顎ぐらい、襟足は肩まで伸ばしていた。珍しい真っ黒の髪。
気づくと志麻と紀紗ちゃんを挟んで真正面にいた。私より30センチは大きいからすごく見上げる形になってた。
志麻と紀紗ちゃんが隠すように先輩に立ちはだかった。しかし、先輩は気にしてなさそう。てか、視界に入ってない…?
「………久しぶり、だな…」
「…え?…久しぶり?」
しばしの沈黙…
「…も…もしかして………俺のこと…覚えてねぇ、の?」
東海道先輩は悲しそうな表情をした。
いや、覚えてないもなにも、知り合ってないじゃないですか…正直に頷くとさらに悲しい表情になった。
え、私のせい?
ちょ、戸山先輩…隠れて笑こらえないで下さい…!
東海道先輩は顔を伏せ、「はぁ…」とため息をついた。そのまま動かなくなった。とおもったら、勢いよく顔をあげて、私を冷たく睨みつけた。
「…俺を……忘れたの…?…………最悪……………【ひよわむし】のくせに……………」