鍵の付いた羽根たちに。Ⅰ
昂という男は反対側の座席に周り、
ドアを開け手を差し出す。
その手を軽やかに取る女は、
梓…だった。
「梓?」
悠利がふと、声を漏らす。
それと同時に一瞬こちらに向いた梓の目。
だが、すぐ男に視線を戻し
楽しそうに会話をし、
恋人繋ぎというやつで、
こちらを歩いてくる。
けれど此処で止まる気は無さそうで、
素通りするようだった。
だから
思わず声をかけてしまったんだ。
男に…
「お前…
誰だ…」
自分でもビックリするくらい低い声が出た。
途端に振り向く二人。
男はニヤッと笑っている。