ナムストーンPART1

レイシッキム3

レイはその日もしゃがみこんで一番奥の一角、指輪とブレスレットが
とても美しい無口な若者の指輪に見入っていた。その時である。

「あらっ?」
スカートの右側のポケットに石が入っている。

取り出して手のひらのうえで開けてみる。
なんとも奇妙な水色の半透明な小石だ。

「これ、あなたの?」
と若者の目の前にしゃがみこんで指輪に鑢(やすり)
をかけている無口な若者に見せた。

若者はレイをじっと見つめて静かに首を横に振った。
そのまままた作業を続けている。

『見えないのかなこの石。じゃあもらっとく』
レイはそのまま石をしまい立ち上がった。
待ちくたびれた祖母が近づいてきて足早に王宮へと帰る。

部屋に戻るとレイは石をつまみ出してよく眺めた。
うすい萌黄色だ。とてもうれしいと思った瞬間、
薄いピンク色に変わった。

形も奇妙などんぐり形だ。見とれていたらトントンと
ノックの音がしてドキッとすると石の色は一瞬青に変わった。

『あらほんとに不思議な石だこと』
と思いつつ大急ぎで石をポケットに戻すと大きな声で、
「はいっ!」と返事をした。

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