ナムストーンPART1

自爆テロ

それから2ヵ月後のカイロ。グランバザール入り口付近の大通りに
いつものようにナセルは車を止めようとした。

前方にバスが故障で止まっている。乗客はほぼ満員。
運転手と誰かが言い争いになった。するとその時、
甲高い声を上げて背中に何かをしょった男の子が走りこんできた。

「どっかーん!」大音響が起こる。
舞い上がる白煙と風圧。瓦礫と人の体がフロントガラスにぶつかる。
ナセルはまさにドアを開けようとした瞬間だった。

座席に伏して石を握り締めナムストーンと叫び続ける。
幸いなことにフロントガラスは割れていない。
砂埃の中に逃げ惑う人々。阿鼻叫喚とはこのことだ。

慎重にドアを開けてナセルは外に出た。
黒煙を上げて燃えるバス。逃げようとする人と
助けようとする人とがぶつかり合う。

消火器の泡があちこちから上がりやっと炎は消えた。
くすぶる白煙とすごい悪臭。砂埃の中に叫びうめき
うごめくけが人たち。

地獄だ!テロだ、無差別自爆テロだ!
しかも子供が爆弾を背負って突入してきた。
これほどの悲劇はない!

誤まれる思想や宗教は人類を破滅させる。
何とかならないものか?
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