ナムストーンPART1

大地震7

どこに誰が住んでいるかを一番よく知っていたのは
近所の面倒見のいいおばさんたちだった。

いかに近所づきあいが大事かを思い知らされる。
人付き合いのない独居老人には誰も気づかなかった。

暗闇の中で生きたまま焼かれ、瓦礫の下で傷つき
力尽きて死んでいった数千人の人々。

政府首脳の危機出動の遅れでかなりの人々を
救い損じたのは事実だ。

首都圏と地方とのこの反応の違いは腹立たしい。
なぜすぐに国家非常事態宣言が出されなかったのか?

芦屋の研究所員の話では、

「ものすごいゆれで水槽が壊滅、パソコン類もデータ棚も
すべて倒壊してやっと収まったかなと思ったら、
余震で実験器具も壊滅した」

と興奮冷めやらない。
建物の倒壊は免れたが裏の道路はずたずたに裂け目が見えている。

ここから神戸市内までがほぼ全滅状態なのだ。
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