ナムストーンPART1

いい響き

紹介状を持って大学病院を訪ねた。検査に時間がかかっている。
どうも白内障だけではなさそうだ。

「アトピー性白内障と網膜剥離が起きています。早めに手術をしないと
失明の恐れがあります。ご家族と至急相談してください」

大学病院のトイレに駆け込んだ。ポケットから石を出す。
かなりのショックだ。石もグレイに沈んでいる。

両親はここのところ会社も不景気で倒産寸前だとか言っている。
早くバイトを探せと父親はうるさい。こんな時に費用も相当かかりそうだ。

帰ったらまず母親に話さなければならない。かなりの勇気がいる。
落胆する母の姿が悲しく目に浮かぶ。思わず石をきつく握り締めた。

「俺に勇気をくれよナムストーン?」
心で無意識に叫んでいた。ナムストーン、いい響きだ。

「ナムストーン!俺に勇気をくれ!」
そっと石を見つめると少し輝きだしたみたいだ。
さらに心に強く祈るとぐっと輝きが増した。

「よしがんばるぞ。今日からこの秘密の石をナムストーンと名付けよう!」
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