【完】白衣とお菓子といたずらと
「はい、連絡終了です」


美沙は笑みを浮かべて、おどけた様に敬礼をしてみせた。


「あれ……どうしました?」


動揺した状態から、完全回復が出来ていない俺を不思議そうに彼女が覗き込んできた。


俺がこんなにも動揺する出来事も、彼女にとってはごく当然の事だったらしく、いまいち俺の様子の理由が分からないみたいだ。


「……いや、まさか正直に彼氏の家って言うとは思わなかったから、すごく驚いてた。話しても大丈夫だった?」


「全然問題ないですよ。というか、隠すような相手を私は選んだつもりないですから」


……今のは、ガツンときた。すごく嬉しい。


俺は、隠すような相手じゃないか……。美沙の言葉を1人頭の中で反復した。


「というか、父に文句は言わせませんので。朝には妹も帰るだろうし」


初めて聞いた彼女の家族の話に、知らない事が多いという事に気づいた。


美沙はどんな環境で育ったんだろうか。どんな小さな事でも、もっともっと彼女を知りたい。




「妹がいるんだね」


「あれ、言いませんでした?私3姉妹の真ん中なんですよ。母は早くに亡くなったので、今は父と姉妹4人で暮らしてるんですよ。私は普段が品行方正なので、他の姉妹みたいに父からうるさく言われないんです」


当然という顔で、すごく自慢気だ。この表情になる理由はいまいち理解できなかった。


俺に分かったのは、彼女の家族構成くらい。


まぁ、ひとつ彼女の事が知れたと思おう。


ただ彼女の育った家は、すごく温かいんだろうなと、そんな想像は出来た。


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