【完】白衣とお菓子といたずらと
「山下さんに彼女かー」


しみじみと言い出したのは大山。


「しかも、相手が小川ってのが少し意外です。というか、院内ってのが意外なんですよね」


「確かに、病院内で誰かと付き合うって面倒だと思ってたからな」


「それでも付き合うんだから、お互いに真剣って事ですよね」


池田の意見に、大山もうんうんと頷いている。


……確かに。今までの俺なら、院内恋愛なんて考えたこともなかった。面倒なことの方が大きかったからな。けど、美沙相手だとそんな事、気にもしなかった。


「俺は軽い気持ちで同僚に手は出せないよ」


「……なんでこっちをみるんですか」


香坂のほうを見ながら言うと、予想していたのか香坂とばっちりと目が合った。


俺と香坂の会話に、他2人が笑い出してしまった。


「でも、俺は山下さんと小川は合ってると思いますよ」


涙を流しながら笑っていた池田が、目元を拭いながら話はじめた。


「山下さんって優しすぎて、相手に合わせて動いたりするじゃないですか。だから、はっきりと意見が言えて、けれど最終決定を山下さんに任せてくれるような人がいいと思ってたんですよ。よく考えると、小川ってまさにその通りなんですよね。いつもは黙々と働いているのに、いざという時にはしっかりと意見を言うし、それが正論なんですよね。けど、押し付けがましく言ったりもしないし、気づいたら誘導されてるようなそんな感じなんですよ」


俺の事もこんなに見てくれてたんだな。









けれど、なんか気に食わない。俺が知らない美沙をこいつらは知ってるんだよなって思ったら、なんだか妬けてきた。


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