【完】白衣とお菓子といたずらと
――コトっ


美沙が作り置きしておいてくれた物を温めたり、揚げ焼きにしたり、準備を終えてどんどんと新しい缶を開け始めている3人の元へ戻った。


「ほら、追加のつまみ」


皿を目の前に置くと、3人は一斉に箸を伸ばした。


いただきますも何もないのかよ。突っ込もうと思ったけれど、無駄だと思い止めた。


俺も空いている場所に腰を降ろすと、大山からスッと焼酎ロックが差し出された。


「ありがと」


お礼を言って、俺もアルコールを口にした。


そういえば、こんな風に誰かとお酒を飲むのは久しぶりかもしれない。


「……愚問かもしれませんけど、一応確認していいですか?これは小川が作ったんですよね?今までは買ってきたつまみばっかりでしたよね。何ですか、この変わりようは」


それにしても気持ちがいいくらい食べるよな。そう思い、3人を眺めていると、まだもぐもぐと口を動かしている香坂が、行儀悪く聞いてきた。


「そうなんだよ。今日宅飲みするって言ったら、作り置きしていってくれたんだよ。俺は温めたり仕上げたりしただけ」


美沙が折角作ってくれたものを俺も食べる事にした。


俺の答えに、3人はため息を吐きながら首を横に振った。


そして、何かを思い出したのか、池田が『あっ』と声をあげた。








「そういえば、駅でキャリーバッグ引いてる小川を見かけたんですけど、今回はどこに行ってるんですか?」


「……何のことだ?」


……は?駅?キャリーバック?


いや、俺は何も聞いていないけど。予定があるとしか聞いていない。
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