【完】白衣とお菓子といたずらと
美沙は俺に先にリビングに行くように促した。


彼女の行動すべてに警戒して理由を聞くと、キャリーバックのキャスターを拭きたいらしい。ずっと外を転がしていたから、と。


大人しく彼女を待とうと思ったけれど、落ち着かない。


ソワソワとしてしまう身体を落ち着かせるために、2人分の飲み物を用意することにした。


美沙に散らかっているキッチンを見せないためでもあるけれど。


今まではたまに流しが汚れているくらい気にもしなかったのに、今ではどうだろう。美沙と過ごした短い間に随分と躾けられてしまった気がする。




――ゴロゴロ


拭き終わったのか、バックを引きずりながらキッチンを彼女が横切っていた。


自分の家みたいに自由に過ごしている彼女を見ると胸の奥が温かくなる。けれど、今はそんな事言っている場合ではない。


話をするために、早急にここへ連れてきたんだから。


湯気の出ているマグカップの中身を零さないようにそっと両手に抱えると、彼女のいるソファへと向かった。
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