【完】白衣とお菓子といたずらと
「美沙じゃなくって、みさみさ。私のネット上でのハンドルネームなの。普段ライブには1人で行くんだけど、そこでネットで繋がりのある馴染みのファンと一緒に行動するの。そのお馴染みのグループの中に夫婦がいてその旦那の方だよ。電話もらったときは、メンバーとハイタッチする順番待ち中で、もうすぐ順番ってなったから声をかけてくれたんだよ。写真見る?」


こんなにも饒舌に話をする彼女は初めてかもしれない。目もイキイキしている。


彼女にこんな一面があったなんて、知らなかった。


知らなかった彼女を知れたことを嬉しいと感じてしまった。


……美沙、君の心配なんて必要なかったと思う。


だって、こんなにもどんな君でも知りたいし、知れば嬉しいんだから。


そんな事を考えているうちに、俺の答えなんて聞かずに、バックの中をガサガサと漁り始めた。


「あった。ちょっと待って」


出てきたのは彼女のデジカメ。そしてカチカチカチと何やら操作している。


「これが昨日の写真。この人たちと行動してることが多いかな」


そう言って、彼女がカメラを差し出してきた。


画面を覗き込むと、そこには女性が4人と男性が1人映っていた。


きっとホテルか何かだったんだろう。美沙も含め、みんな綺麗な格好をしていた。


「もう1枚ありますよ」


余程楽しかったんだろうか、楽しかった事を思い出すようにクスクスと笑いながらデジカメを操作している。なんか……妬ける。
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