【完】白衣とお菓子といたずらと
寂しそうな姿を見ていられなくて、目の前にいる彼女を引き寄せて抱きしめた。


「美沙……。行ってもいいんだよ?」


「……え?」


「なんで美沙には回数を減らすとか、俺を説得するって選択肢はなんだろうね。そりゃあ、あまりにも回数が多いと困るけど、やめる必要はない。さっきも言ったけど俺を信用してよ」


そう、彼女には白と黒の中間がない。


「その代わり、どこかへ行くときは俺にも教えて。それだけで俺は安心できるから」


本当は俺の知らないところになんて行って欲しくない。けれど、これが美沙で、俺はそんな美沙を好きになったんだ。


彼女にもその気持ちが伝わって欲しい。


俺の言葉を黙って聞いていた彼女は、やっと聞き取れるくらいの声で、ありがとうと言った。


そして、もごもごと声にならない声を出した後、一度深呼吸をした。


「……そうだよね。たまには行かせて。ちゃんと相談するから」


「ああ、そうしてくれると俺も安心する。そして美沙も我慢しなくていい。一人だけが我慢するのは良くないよ。俺たち結婚するんだろ?」


これからはお互いに自分の事だけではダメなんだ。


美沙の左手を取り、薬指に輝く俺のものだという証に、そっとキスをした。


「うん……」


顔をあげて俺を見つめてくる彼女の目からは涙が零れ、頬を伝っていった。


あっ、俺が欲しかった笑顔だ。


今の彼女は本当に綺麗で、そして本当に愛おしい。
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