【完】白衣とお菓子といたずらと
君は愛されているよ
週末の金曜日、仕事が終わった俺たちはいつものように俺の家で、2人ソファに座り寛いでいた。


いつもと違うのは俺の頭の中。


今日はというより、ここ最近ずっと考えていた事。


「……美沙。そろそろさ、君のお父さんに会いたいんだけどな」


俺のプロポーズを受け入れてくれた美沙。


けれど、まだ俺は彼女の家族には一度も会えていない。それどころか、彼女の口から家族の話が出たのはほんの数回位しかない。知っているのは家族構成程度。あと信用されているらしいという事くらいなもんだ。


週の半分近く俺の家で過ごしているというのに、特に問題ないと彼女は言う。普通は年頃の娘が男の家に入り浸っているって、父親は怒る場面じゃないのか?もしかして、すごく複雑な家庭で、だから話にも出てこないのかと疑ってしまう。母親は居ないと言っていたし。


「お父さんか……んー、会いたい?」


困ったように笑う彼女。やっぱり何かあるのか。


「そりゃあ会いたいよ。俺と美沙は結婚するんだろ?だったら、ちゃんと挨拶に行くべきだよ」


そうだ。本当ならもっと早くに行くべきだったとさえ俺は思うのに、彼女は何かを躊躇っている。


俺の真剣さが伝わったのか、すごくすごく悩んで、そして彼女は口を開いた。


「いいけど、覚悟してよ」


……覚悟って?


やっぱり家族関係に何か問題があるのか、それともものすごく恐いお父さんなのか。どちらにしても、早く行くに越した事はないと思う。


そうは思うけど、彼女の言う“覚悟”の本当の意味が気になってしまう。


「覚悟って?」


分からないなら、聞くべきだよな。


「ウチのお父さん、私のこと大好きなんだ。私の決めたことに反対はしないから、礼央さんとの結婚も反対は絶対にしないよ。ただ、挨拶に行くなら、結婚を考えていますは通用しないと思う。いつ頃とか、はっきりした意志を求められると思うよ。その覚悟があるなら、私はいつ行ってもいいよ」

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