【完】白衣とお菓子といたずらと
「今日はちゃんと家に帰る」


「うん」


あー、今の美沙は凄くいい顔をしている。可愛い女の子ではなくて、強い意志をもった素敵な女性。そんな言葉が似合う姿。


彼女の真意を聞きたくて、俺は頷きながら相槌だけを打った。


「ちゃんとお父さんと話してくる。電話とかじゃなくて、直接話したいから」


「うん、お父さんと話しておいで。今度、俺からもちゃんと話をするから」


俺の言葉に、美沙は嬉しそうにはにかんで首を縦に振った。


こういう真面目な点も美沙のいい所で、俺が惹かれる部分。きっと一般的な美沙くらいの歳の父娘なら、こんなに向き合おうとしないだろう。母親を介したり、電話で報告してアポを取ったり、父親に直接話をしてっていうのが俺はすごいなと思う。


それだけ、家族の強い絆というか強い繋がりがあるんだろうな。……羨ましい。


うちの家族に繋がりがないかと言われると、自信をもってそんな事はないと言える。けれど、山下家とはまた違った家族形態に、憧れのようなものを感じる。


そんな人たちの家族の一員に、俺もなりたいと強く思った。
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