【完】白衣とお菓子といたずらと
日付が変わる頃、彼女から電話があった。


お父さんに俺との事を話せたらしい。


早速だけど、明日来て欲しいということだった。


珍しく俺も美沙も土日で2連休だったため、日程的には調度良かったかもしれない。


もちろんと、申し出を快諾した。


電話で彼女のお父さんの好みを尋ねると、たくさんは飲まないけど毎晩晩酌しているという。


手土産に持っていくと伝えると、焼酎がいいとリクエストまでされた。家計の酒代が浮くから助かるという理由らしい。なんともちゃっかりしている理由に、頼もしいなと可笑しくなった。


やっぱり美沙は奥さんには向いていると思う。


……明日か。


美沙には任せろと言ったけれど、今からとても緊張する。


って、スーツ。看護師をしていると、普段スーツなんてものを着る機会はほとんどない。たまに、講習会がホテルであるときに引っ張り出すくらいだ。


滅多に着ないスーツを慌ててクローゼットから引っ張りだした。


クリーニングに出していて良かったと、過去の自分を誉めたくなった






そして、俺の両親への報告の約束もした。


両親の所在だけは付き合い始めた頃から話はしていた。


海外に住んでいる両親に会いにいくのは難しいから、2人がこっちに戻ってくるときに挨拶に行く予定だ。


姉ちゃんから俺に彼女が出来たことを聞きつけたらしく、数日前にいよいよ結婚するのかと催促の電話があった。姉ちゃんに紹介しているから、そうだろうと思いこんだらしい。そのつもりだから構わないんだけどな。


だから、それとなく結婚の話もしておいた。両親、特に母が喜んでくれていた。俺は“いい人”で一生過ごしていくんじゃないかと心配していたらしい。


正月のシーズンを避けてこっちに戻るらしく、美沙が俺の両親に会うのは少し先になりそうだった。


結婚までに必要な段取りを考えていると、明日が大きな山場だということを思い出した。


……緊張してきた。


ベッドに横になってみたものの、今夜は眠れそうにない。
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