【完】白衣とお菓子といたずらと
「……あの、今日はお話があって伺わせて頂きました」

「……」


お父さんとじっと見て話し始めた。無言のお父さんに緊張感がさらに増してくる。


美沙も隣で見守ってくれている。……男を見せろ、俺。






「美沙さんと結婚させてください。お願いします」






1番伝えたい一言を、余計な言葉は付け加えずに伝えた。


お願いしますの言葉と同時に俺は頭を下げた。表情の変化を見るのが恐くて、なかなか顔をあげられない。


けれどずっとこうしているわけにもいかず、恐る恐る顔をあげた。


……え?笑っている?


目の前に座っているお父さんは、意外な表情をしていた。


ニッコリと笑っているわけではないが、口角を少しあげて微笑んでいる。


目が合うと、今度はお父さんが頭を下げた。


「娘を……よろしくお願いします」


……へ?


予想外にあっさりと出た許しに、俺は拍子抜けして口が開いたまま声が出なかった。
< 207 / 220 >

この作品をシェア

pagetop