【完】白衣とお菓子といたずらと
ここでも空気を読めないのか、見事に読んだのか分からない姪っ子が空気を変えた。


「キレイなお姉さんこんばんは。お姉さんは礼央くんの……かのじょなの?」


彼女なんて言われて、小川さんは迷惑だろうな。そう思うと、すぐには彼女の顔を見る事が出来なかった。


……グサリと俺の胸に何かが刺さったような感じがした。というか、彼女なんて言葉どこで覚えてきたのか。最近のガキは本当にませている。


七瀬の言葉を反復するほど、ますます虚しく、そして切なくなった。


姉ちゃんの顔を見ると、言葉にはしていないが、はっきりと「気になります」と顔に書いてある。


残念ながら、あんたが期待しているような間柄ではないんだけどな。


「お姉さんは俺の怪我……痛い、痛いを治してくれる人」


未だに小川さんを指差したままの七瀬の手を、強制的に降ろしながらそう説明した。


自分で言っていて虚しい。


「……なーんだ、彼女じゃないのか。2人きりでおやつなんかしてるから期待したのに」


今度は七瀬ではなくて、姉ちゃんから返事が返ってきた。きっとそんな風に勘違いしたのはさっきの表情ですぐに分かった。


「すみません紛らわしいことしてしまって。私甘い物が大好きなので、疲れたときにここでご馳走になって癒しをもらってるんですよ」


一切動揺した様子もなく答える小川さんに、すごく残念な気分になった。


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