【完】白衣とお菓子といたずらと
「早速ですね、左足首動かしていきます。痛いときは言って下さいね」


そう言うが先か、俺の足部に触れるが先か、どちらとも言えない位、ほぼ言葉と同時に動かし始めていた。


今までも、自分では動かしていたけど、左右差がとても目立つ。


今日からはこの関節の動きを良くするメニューも、どんどん追加するらしい。


初めは軽くマッサージされているような感じで、痛みは感じず、どちらかと言えば気持ちいいくらいだった。


こんなんなら楽勝だろ。余裕、余裕。





――……

小川さんは黙々と集中して、俺の足首を様々な角度に動かしている。


真剣な彼女の表情に見入っている時だった。


「……ィ…ッタ。痛い、痛い、痛い」


って、痛いから。

本当にそれ痛いから。


……余裕は一瞬のうちに消えた。


余裕だなんて考えた矢先に走った痛み。


痛いと言った俺の言葉に反応し、一度は手を離し顔を上げた彼女にホッとしたのも束の間、あろう事か痛いと言ったところまで、再び動かし始めた。


えー、痛いと言ったのに、やめてはくれないんだ。裏切られたような残念な気分になった。


「それ、その動き痛い」


今度は先ほどより、少し具体的に痛みを訴えた。


そうすると、今度こそ完全に一度手を止めてくれた。


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