【完】白衣とお菓子といたずらと
「どこが、どんな風に痛みますか?」


んー、そんな風に聞かれても、この痛みをなんと表現すればいいのか分からない。


「内側、外側とか、背面とか。後は、刺すような痛みとか、鈍い痛み、突っ張るような痛み、電気が走る様な痛みとか、なんとなくこんな感じってのを教えて下さい」


何と答えるか悩んでいると、俺の考えが伝わったのか、質問を変えてくれた。というか、選択肢を与えてくれた。
さっきよりも物凄く答えやすくなった。


「背面が、すごく突っ張るような感じ。こう、下にやったときに、ピキっと走る感じ」


ちゃんと伝わるように、出来るだけ具体的に答えた。こんな感じでいいのだろうか。彼女が求めている答えになっていただろうか。


「じゃあ、これはどうですか?」


そう言って、俺の足を下の方にぐっと動かし、一緒に足趾も動かした。そして、足の甲を押して左右に動かし始めた。


「んー、それは痛いけど、気持ちいい感じ」


痛みは走るけど、その痛みが不快なものではなかった。それどころか、もっと続けて欲しいくらいに、すごく気持ちがいい。


「今痛みが出ているのは、足趾を動かすこの筋肉が短縮しているからだと思います。そして、今は関節動かして伸ばしてあげて、その筋をさらに指で押して強制的にストレッチしています」


手は動かしながら、説明をしてくれた。


こうやって、話をしてくれるから、痛みに対して不安になっている心を軽くしてくれる。


普段話しているだけでは見えないけど、3年目って言っても、ちゃんとプロなんだよな。


小川さんなら、安心して治療を任せられそうだ。そんな安心感を覚えた。
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