【完】白衣とお菓子といたずらと
それからは最初みたいな激しい痛みもなく、15分ほど関節を動かしてもらった。


終わる頃には、冷え切っていたはずの足先が、ぽかぽかと暖かくなっていた。


「はい、では両足首動かしてもらっていいですか?」


言われるがまま、足の指先を自分の方に向けるように、足首を動かした。


するとどうだろう、あんなにもあった筈の左右差が、ほとんどなくなっていた。まだまだ、左の方が動きが悪いけど。それでもリハビリ前との違いは一目瞭然だった。


「おー、すごいね。なんか軽くなって、動かしやすくなった気がする」


俺は正直に話した。この変化に、感動した。


短時間でこんなにも変わるもんなんだな。


「今度は平行棒で、タッチウェイトでの歩行練習します」


……まだ、それがあったな。


俺的には、もうこれで終わってもいいんだけどな。


そんなわがままは言えないか。


「まだタッチウェイトだけ?」


一応、確認した。タッチならほとんど荷重してないようなもんだから、フル荷重まで今後どれだけかかるんだろうと考えると、気が遠くなる気がした。


「そうですね、今週はタッチウェイトでいきます。ドクターが言ってたんですけど、このまま骨癒合が進めば、来週辺りから疼痛みながらどんどん荷重していいそうですよ。だから、もどかしいでしょうけど、もう少し荷重するのは待ってくださいね」


ベッド上に起き上がった俺は、立っている彼女と視線が同じ高さになり、ばっちりと目があった。その彼女の表情は笑っているけれど、目は笑っていなかった。


『逆らうべからず』


そんな言葉が頭に浮かんだ。


ちょっと位いいんじゃないかという俺の考えは、見透かされていたらしく、先に釘を刺されてしまった。


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