【完】白衣とお菓子といたずらと
病室に戻って俺が最初にした事は、冷蔵庫の中身の確認。


昨日たまたま同僚ナースからもらった、コンビニで買ってきたらしいチョコレートドリンクが入っていた。


他には……と見てみたが、今はお茶とかの飲み物ばかりで、お菓子は見当たらなかった。


唯一甘い物は、こいつだけ。

これも、彼女は好きだろうか?


俺の足を冷やすと言っていたんだ、今日はきっと勤務時間内に来るはず。


それならば、これ位のものが調度いいのかもしれない。


甘いものが大好きな彼女だ、きっとこれもおいしそうに飲んでくれるだろう。



――……



あー、ダメだ、ダメ。


いつもの一気に幼くなるような、あの笑顔を思い出すと、表情が緩んでしまう。


こうやって、一瞬で思い出せるくらいに、彼女の表情を焼き付けているなんて。


それなりの時間を過ごしてきた証拠だけど、自分から動けないで居る辺り、俺って相変わらず女々しいというか、情けないというか。どちらも男性としての魅力は……すごく低いよな。


どうせ俺は彼女を見ている事しか出来ないんだ。


だから、こういうことを全力で喜んで、楽しみにしてもいいだろう?そうでもしないと、俺が報われない。それくらいは……許されるはずだ。


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