【完】白衣とお菓子といたずらと
「……そうだよな。池田と話してスッキリしたよ。まぁ、俺から行動するとしても、こんな状況だから難しいことが多いけど」


彼女は休みでしばらく仕事に来ないし、なにより俺は入院中のただの患者だ。


そういう話をする機会もほとんどない。こんな所で、格好悪い状態の俺のままで告白なんて嫌に決まってる。


「確かに、ここではですね……」


俺の言いたい事が分かったのか、病室を見回して、池田も苦笑した。


「あっ、でも山下さん試験外泊の話があがってませんでした?」


どうしてそんな話をこいつが知っているんだ。情報の速さには驚かされる。


でも分からない。


「それが何か関係あるのか?」


分からないのが、今までの話と俺の外泊の話の関連性。


「大いにありますって。小川が参加する学会は、県内で行われるものだから、夕方以降はフリーのはずですよ。だから、その週末に話をしたらどうですか?小川が教えていった連絡先利用して。もしかしたら、連絡待っているかもしれませんよ」


……待ってくれている。もしそうだとしたら、今の俺は小川さんを悲しませているんじゃないか?


きっかけを作ってくれたというのに、俺が動けない意気地なしのせいで。


「そうだよな……。俺から連絡してみるよ。色々とありがとうな」


池田のお陰でいろいろと考えがまとまった。


「いえいえ、礼には及びません。うまくいったら、ちゃんと教えてください。」


「あぁ、分かったよ。池田に一番に報告するよ」


俺の答えに納得したのか、俺の話はここで終了。


その後は……惚気話を聞かされてしまった。


うざい、そう思う事がないと言えば嘘になる。でも、微笑ましい話に、穏やかな気持ちになることの方が多い。


散々惚気たあと満足したのか、池田はにこやかに帰っていった。


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