【完】白衣とお菓子といたずらと
2人の間に流れる何とも言い難い空気。


「……山下さん、話があるって言ってませんでした?」


本当は俺から言うべきなんだろう。けれど中々勇気が出ない俺は、小川さんにアシストしてもらっていた。このテンポというか、この気遣いは凄く好きだ。


自分から言えない俺自身が、ただただ情けない。


俺は大きく息を吸い込んで、彼女を見つめた。そうしたら、横目で俺の事を見ていた彼女と目が合った。


「あのさ、俺……」


緊張のせいか、声が少し掠れている。一度唾を飲み込み、言葉を続ける。









「小川さんのこと好きになったみたいなんだよね」








もう誤魔化したり、我慢はしたくない。


今までの彼女の行動に、もしかしたらと期待して行動に移したけれど、気持ちを言葉にしてみて、急に不安に襲われた。


早く、早く、答えてくれ。何か言ってくれ。


バクバクと心臓の音が大きくなったのが分かった。彼女に聞こえてしまわないといいけれど。


俺が期待する言葉を、早くくれないか。


君から“好き”の言葉が聞きたいんだ。


彼女が答えてくれるまでの時間が、ものすごく長く長く感じる。
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