【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
木と木の隙間からはグランドが見え、そこでは野球をしている男子の姿があった。
あぁ、下駄箱から聞こえてきた声はここからだったのかぁ。
そう思いながら元気に動き回る生徒達からすぐに視線を前方へと戻し、目的の場所である木々が沢山生い茂っている所へと向けた。
あと少し…
そう目算しながら歩いていくと---
辺りはもう、木々の生い茂った森…とまではいかない林。
シーンと静まりかえるその場所は、サワサワと葉の擦れる音や鳥の鳴き声などが聞こえてくる。
自然溢れるそこへ一歩一歩と、足を踏み入れていった。
こんなに自然の気を浴びているからなのかな?
身体から何かが漲ってくるような、熱いものが込み上げてきたのを感じる。
細胞一つ一つが自然に触れる事で、心地良いと訴えているのが分かった。
不思議な気分だった---
自然に触れると何故かいつもそう感じるのは皆も同じなのだろうか?
それとも私だけ?
そんな事を思っていたけれど…、
自然溢れるこの空気に触れていれば、すぐにそんな考えはどうでも良くなっていった---