【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「………」
「………」
副会長へと目掛けて飛んできた小さな白球が放物線を描き、地面へと激突。
それを見届けた副会長の瞳が一気に見開き、そしてコロコロと地面を転がっていくボールを目で追っていた。
良かった…、
副会長にぶつからなくて---
ホッとした私も副会長と一緒に、そのボールをジッと見つめた。
私は、人より実は耳が凄く良いのだ。
そして目も…
だから野球のボールが副会長に向かって飛んでくるのをすぐに聞き分け、すぐさまそれを副会長に伝える事が出来た。
当の副会長は今だ驚いた表情で、ピタリとボールが止まった今もなおジッと見ている。