【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
暫くしてフッと息を整えた副会長の視線が、今度は私へと向かう。
それはもう、訝しげな視線で---
「…何故、ボールが飛んでくるのが分かったのです?」
「えっと……、ボールの音が聞えたから?」
「………」
副会長のサラサラの長い黒髪がフワリと風に揺れたのが、視界の端に捉えた。
どんなに綺麗な髪をした女性にも負けない、そんな副会長の髪に見惚れてしまう。
じっと揺れるその髪を魅入っていると強い視線を感じ、その瞳の主へと意識を向けた。
私が副会長の話しを無視したと勘違いしているのか目を細め、瞳から氷の飛礫でも飛ばしそうなほどに私を睨んでいる。
そんな冷ややかな瞳に困ったな…と、私は首を捻った。