【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「東條綾香…」
キラリと光った副会長のリムレスフレームのメガネを見ながら、自分の名を告げた。
一つ頷いた副会長は、そのまま口を開く。
「私の名は、氷見時政です」
「知ってます。副会長さんですよね」
「そうです。ところで東條…さんは、耳がとてもよいのですね」
「…そうですね。人より…いい方だと思います」
「不躾で申し訳ないが、東條さんの格好からして人より鈍そうなのに…」
その言葉にカチンときた。