【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「…綾香。それ---」
良牙がこのアートな私の上履きを指で指すものだから間近で見てもらおうと、良牙の方に近づける。
「良牙?」
見せるだけに留めるつもりだったのに、良牙は私から上履きを取り一つ一つ上履きについている画鋲を取ってくれた。
「あぁぁ良牙、そ、それは…」
画鋲を取ってしまったら、芸術作品ではなくなってしまうよぉ!
と言おうとしたが睨みつけられ、その言葉は私の口からは出ることはなかった。
すみません---
しかし…、
上履きから抜き取った画鋲をポイポイそこら辺に捨てていく良牙。
おかげで辺りは画鋲だらけだ。
しょうがないので落ちた画鋲を、私は一生懸命拾う事にした。
「ありがとね、良牙…」
「…あぁ」