【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「おはよう東條さん。お目覚めはいかが?」
「悪くはないわよ?」
「そう。それはよかったわ」
にっこりと微笑む目の前の女はついさっき、校庭で私に話しかけてきた女だった。
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「東條さん」
「はい?」
障害物競走で一番を取った私は、『1』と書かれた旗の前でボンヤリと三番目にスタートした生徒達を見ていた。
すると二番手の出走者で、私と同じ『1』の列に並んでいる人に後ろから話しかけられる。
悪意なく話かけてくるのは珍しくて、思わずその人を凝視してしまった。