【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
本当に……、
変身…するんだ---
ゴクンッと喉を鳴らした頃には、私の目の前に艶のある毛並みの大きな黒ヒョウが姿を現した。
「恢…」
「………」
私の呼びかけに暗闇の光を宿した黒ヒョウが、チラリとこちらを見る。
ヒラリ---
変身したと同時に脱げた服なのだろう、地面に落ちたそれを口に咥え私に投げて寄こした。
「えっ?…私に持てって事?」
微かに頷いた黒い獣は、そのまま扉へと近づく。