【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
章平からはもう、生気を感じられない。
それでも…、
章平がまた、話しだしそうな気がしたから顔を覗きこんだ。
小さい頃から俺の親友だった章平。
その時の思い出が、俺の脳裏には走馬灯のようにたくさん映し出された。
それは全て、笑顔の章平でいっぱいだった---
もう、見る事の出来ない章平の笑顔に胸が苦しくてたまらない。
「章平…ッ」
もう一度、目の前の人物の名を呼ぶ。
返事がない。
あたり前だ、俺が殺したんだからな---
震える手で、章平を顔をなで上げた。
俺の涙が章平の目の窪みに入り、それが章平の涙のように流れ落ちる。
もう、さっきより顔が冷たい。
虚しさだけが俺に残る。