【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
そう言えば恢はどこに行ったのだろうか?
辺りを見渡すと、黒ヒョウから人間に戻った恢が少し離れた所で立っていた。
しかもいつの間にか洋服まで着ている。
全然気付かなかった---
あ、でも気付いてたら恢の裸を見ることになっていたから気付かなくて良かったのか…。
ちょっと想像して、顔が赤くなってしまった。
うわっ、何考えてるのよ私っ!
一人でわたわたしていると、横で声が聞こえてきた。
「良牙。いつまで感傷に浸っている」
「…あぁ」
蓮の言葉にハァと一つ溜息を吐き、章平君の握り締めていた手を胸の上へと置いた。
そして目を細め、章平君の顔をジッと見つめる。
「来たぞッ」
「……ッ!」
ピクリと反応した良牙は扉から入ってきた男達に紫色の瞳を向け、そして走り出した。
私達もそれに続くように、黒服達のもとへと走り出す。