【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
恢と二人っきりの時に言っていた言葉を思い出した。
『ずっと俺の傍にいて欲しい』、この言葉を---
もしかして恢は、これから皆の前から姿を消そうとしているのではないだろうか?
だから私にもついて来て欲しくて、『来るか?』って聞いたんじゃないかな?
憶測だけど---
私はこれからずっと恢と一緒に生きて行くと、もう決めている。
だから…、
『行く』と返事をしたのだ。
グッタリと横に倒れこんでいる母さんと、パソコンを黙々と弄っている父さん。
ホールの真ん中では蓮と良牙が、残り十数人の黒服達と闘っている
もう皆をこの目で見る事はなくなるのかもしれない…と、感傷の思いでジッと見ていた。
そして恢へと視線を向ける。
こちらをジッと見ている恢に、ニコリと微笑んだ。
恢を一人にはしない。
一緒に行こう---
覚悟を決め、恢の方へと足を一歩踏み出したその時だった。