【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「好きでもないのに着いて行くなんて、バカだろ?」
「…でも恢を一人にしておけないよ」
「だからバカだっつってんだよッ!どちらか一方に気持ちがねぇのに一緒にいた所で、お互い幸せになんかなれるわけねぇ。そんな事も分かんないのかッ」
「それでも…、一緒にいたいの。だから離して」
「絶対、離さねぇ。…俺だってお前に傍にいて欲しいんだ。だから行かせないッ」
そんな私達のやり取りをジッと見ていた恢が、寂しげな笑みを浮べた。
私達に背を向けた恢はそのまま歩き始める。
ちょっと、まさか私を置いて行く気じゃないよね?
恢と着いて行くって覚悟を決めた私の気持ちはどうなるのよ!
「恢、待ってッ!」
私の叫び声にピタリと立ち止まり振り返る恢をジッと見つめた。