【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
それじゃ連れてけねぇなと自嘲気味に笑い、綾香に背を向け歩き出す。
俺を呼ぶ綾香の声が聞こえるが、もう綾香を連れて行く事は考えてはない。
好きなヤツがいるのなら、そいつについて行った方が幸せになるだろう。
俺の傍にいたところで、幸せにする事が出来るか分からないしな。
綾香には幸せになって欲しい…、
だからお前は連れて行かない---
そう考えてから、思わず笑ってしまった。
俺は、それ程までに綾香の事が好きだったのかと---
綾香の幸せを願うとか…、
俺らしくねぇな。
「クッ…」
思わず苦笑いしたがすぐに気持ちを切り替え、この建物の最上階を目指す。
そこにはこの研究所で何かあった時の為の、爆破スイッチがあるからだ。