【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~


そのスイッチを押し、この研究所に残されているもの全てを消そうとしている。


本当は研究データ全ても抹消したいところだかそれはパソコンで管理されていて、いくらここを叩いたところで無駄なのは知っていた。



それでも俺は、ここを爆破する事しか考えてはいない。



それを考えたのは、遥か昔---


俺が子供の頃、自分の目の前で母親が第一段階である投与を行なわれる際、母親の死に行くさまを見せ付けられた時からだ。



そして母親に投与したのは、この研究所で働いていた父親だった。


 ~*~*~*~*~*~*~


「恢。ここで変身人間になれたのはお前で二人目だ。私は鼻が高いぞ」


「………」



そう言って黒ヒョウとなった俺を見ながら笑みを浮べる父親をジッと見る。



殺してやる---



お前らの目標である変身人間に殺されるんだ。


本望だろう?



ニヤリと笑い、父親の前へと四足を使って歩く。



初めて変身人間になったばかりの身体だと言うのに、すんなりと思うように動いてくれた。


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