【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「………」
この研究所のメインコンピュータがあるこの部屋の片隅には、ガラスで守られている赤いスイッチがある。
それに目をやった。
『恢…、何をしている?』
「………」
ボスの声がこの部屋に響くがそれに答える事なく、俺の足は迷う事なく前へと進んで行く。
『もし、爆破なんてしてみろ。お前を地の底まで探し出し、死よりも辛い目に合わせてやる』
「…そんなもの怖くはない。お前の下らない研究のせいで、どれだけの者が苦しんだと思っている」
『この研究はそれだけの価値があるのだ。分かっているだろう?』
価値がある?
何をバカな事を---
話しにならないと口を開くのを止め、爆破スイッチの前で立ち止まった。