【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
そろそろだな---
研究所内を取り囲む塀まで辿り着いた俺は、その壁に寄りかかり、研究所を見上げた。
早く敷地内を出ないと研究所が爆破した時、俺にも被害が及ぶのは分かっている。
しかしこのくだらない研究のせいで苦しんだ者達の感情を自分もこの身に受けたくて、あえてこの場所で留まる事にした。
ドォォォォォォォォォォン---
目の前で研究所が爆発した。
爆風が凄い勢いで俺に襲い掛かってくる。
それさえも避ける事なく目だけを瞑り、熱い熱を受け止めた。
チリチリと髪の焦げる音がする。
瞳をユックリと開け、目の前の変わり果てた研究所を見上げる。
黒煙が目に入り目を細めてしまうが、それでも俺にはこの研究所の最期を見届ける義務があると無理やり目を見開いた。
こんな研究がなければ俺の人生はどうなっていたんだろうか?
ふとそんな事を思ったが、想像したのは家族三人でそれなりに暮らしていたという事だった。